建設工事の請負契約は、発注者・受注者いずれにとっても「言った・言わない」のトラブルが起きやすい取引です。こうした紛争を未然に防ぐため、建設業法は第18条で契約の基本原則・第19条で契約書に必ず盛り込むべき記載事項を定めています。

建設業法第18条

建設業法第18条は次のように定められています。

建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基いて公正な契約を締結し、信義に従つて誠実にこれを履行しなければならない。

この条文が求めているのは、大きく分けて次の2つの原則です。

  • 対等な立場での合意(公平平等の原則):発注者と受注者、あるいは元請負人と下請負人のどちらか一方が優越的な立場を利用して不利な条件を押し付けることなく、対等な立場で合意すること
  • 信義誠実の原則:契約締結後も、当事者双方が信義に従って誠実に契約を履行すること

建設業界では、下請への無理な条件の押し付けや口約束による曖昧な取引が起こりやすい構造がありますが、第18条は不公正な取引関係を是正するための「宣言的な規定」として位置づけられており、第19条以下の具体的なルールの土台となっています。

建設業法第19条

第19条は、第18条の原則を実現するための具体的な仕組みとして、契約内容を必ず書面(または一定要件を満たす電子データ)に記載し、署名または記名押印のうえで相互に交付することを義務付けています。

工事金額の大小にかかわらず、この書面契約の義務に例外はありません。数万円程度の小規模な工事であっても、口頭のみでの契約は建設業法違反となります。

契約書に必ず記載すべき16項目
第19条第1項では、契約書に記載すべき事項として以下の16項目が列挙されています。

No.記載事項
1工事内容
2請負代金の額
3工事着手の時期及び工事完成の時期
4工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
5前金払や出来高払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
6設計変更や工事中止の場合の工期・代金の変更、損害の負担に関する定め
7天災など不可抗力による工期変更や損害の負担に関する定め
8価格等の変動に基づく請負代金の額又は工事内容の変更(スライド条項)
9工事の施工により第三者が損害を受けた場合の賠償金の負担に関する定め
10発注者が資材提供や機械貸与をするときは、その内容及び方法に関する定め
11工事完成の検査の時期・方法及び引渡しの時期
12工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
13契約不適合責任(旧・瑕疵担保責任)に関する定め
14履行遅滞の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
15契約に関する紛争の解決方法
16その他国土交通省令で定める事項

このうち、4・5・13号など「定めをするときは」という条件付きの項目は、該当する取り決めがなければ記載を省略できます(例:前払金の取り決めがなければ5号は不要)。一方、1〜3号、6〜9号、11〜12号、14〜15号などは、契約内容として当然に存在する事項であるため、省略は認められません。

契約書がない場合のリスク

書面契約を怠った場合、当事者双方に次のようなリスクが生じます。

  • 受注者側:建設業法違反として、国土交通大臣または都道府県知事から指示処分、悪質な場合は営業停止処分などの行政処分を受ける可能性があります。
  • 発注者側:工事範囲が不明確なための追加費用の発生、完成時期が定まっていないことによる工期遅延の責任追及の困難化、契約不適合が生じた際の修補・賠償ルールの不明確化など、実務上のトラブルに直結します。

まとめ

建設業法第18条・第19条は、建設工事の請負契約における基本的な規律です。工事の規模を問わず、契約書の未整備は行政処分や紛争リスクに直結します。

  • 第18条は「対等な立場での公正な合意」と「信義誠実の履行」という契約の心構えを定めた原則規定
  • 第19条は、その原則を具体化するため、契約内容を16項目にわたって書面化することを義務付けた実務規定

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