建設業許可を無事に取得できた。しかし、許可を取得して終わりではありません。建設業法では、許可業者に対してさまざまな義務を課しており、これらを怠ると許可の取消し罰則の対象になることもあります。

この記事では、建設業許可を取得した後に守るべき義務を解説します。


1. 許可行政庁への届出義務

建設業許可業者は、申請内容に変更があった場合、必ず許可行政庁に届出(変更届)をしなければなりません。届出を怠った場合は罰則を受けたり、許可を取り消される可能性があるので注意しましょう。

届出義務は大きく分けて「各種変更届・廃業届」「決算変更届」の2つがあります。

(1)各種変更届・廃業届の提出

経営業務の管理責任者の交代、専任技術者の追加、営業所の移転、役員の辞任、会社名や屋号の変更など、許可行政庁が把握している内容に変更があった場合は、ほぼ届出が必要と考えておいたほうがよいでしょう。

14日以内に届出が必要な変更

  • 経営業務の管理責任者(常勤役員等)の変更
  • 営業所の専任技術者の変更

30日以内に届出が必要な変更

  • 商号・名称の変更
  • 営業所の名称・所在地・電話番号の変更
  • 資本金額の変更
  • 役員の就任・退任、代表者の変更
  • 建設業法施行令第3条に規定する使用人(支店長等)の変更

廃業届について

廃業届は許可の廃業(一部の業種のみ廃業することも含む)を届け出るもので、事業自体を廃業することとは異なります。許可を受けた建設業を営むことをやめた場合、30日以内に届出が必要です。

(2)決算変更届の提出(毎年必須)

建設業許可を取得した事業者が最も忘れやすく、かつ最も重要な義務が決算変更届の提出です。

「変更届」という名称ですが、変更の有無にかかわらず毎年必ず提出しなければなりません。毎年の決算が終了した後、建設業法に規定された財務諸表や工事経歴書等を許可行政庁に提出します。どのような経営状況にあるのか、どれほどの施工能力があるのか、外部に対して明らかにするための重要な義務です。

提出期限:事業年度終了後4か月以内

  • 法人(3月決算の場合)→ 7月末が期限
  • 個人事業主(12月末決算)→ 4月末が期限

提出書類の主な内容

  • 工事経歴書(その年に施工した工事の一覧)
  • 直前3年の各事業年度における工事施工金額
  • 財務諸表(建設業簿記に組み替えたもの)
  • 事業報告書(株式会社のみ)
  • 納税証明書

    決算変更届を提出しないとどうなる?

    決算変更届の未提出は深刻な影響を及ぼします。5年ごとの許可の更新申請ができなくなり業種追加の申請もできません。また、経営事項審査を受けられなくなるため公共工事に参加できず、建設業法第50条に基づく罰金刑の対象にもなり得ます。

    更新時期が近づいてから過去分をまとめて提出しようとすると資料収集に膨大な時間がかかります。毎年忘れずに提出する習慣をつけましょう。


    2. 施工体制に関する義務

    建設業許可業者は、監理技術者等(主任技術者・監理技術者)いわゆる資格を持つ現場監督を、工事現場に必ず配置しなければなりません

    許可を受けた建設業者である以上、監理技術者等に現場を管理させ、適正な施工を確保する義務があります。監理技術者等は専任技術者と同等の資格・経験が求められるため、人員の確保が簡単ではない点にも注意が必要です。

    主任技術者

    元請・下請に関係なく、すべての工事現場に配置が必要です。

    監理技術者

    特定建設業者が元請として下請発注金額5,000万円以上(建築一式の場合は8,000万円以上) となる現場では、主任技術者に代えて監理技術者を配置しなければなりません。

    専任技術者との兼務について

    監理技術者等の専任が必要な現場(請負金額4,000万円以上等)でなければ、営業所の専任技術者が兼務することも可能です。また、同一人物が2現場以上の監理技術者等を兼任することも一定条件を満たせば認められます。

    なお、2025年の建設業法施行令改正により、ICT活用による専任義務の合理化が進められており、一定の条件を満たせば技術者の兼任が認められるケースも出てきています。

    施工体制台帳・施工体系図の作成

    特定建設業者が発注者から直接工事を請け負い、下請発注金額が5,000万円(建築一式は8,000万円)以上になるときは、現場ごとに施工体制台帳を備え付け、施工体系図を見やすい場所に掲示しなければなりません。公共工事では施工体制台帳の提出も必要です。


    3. 請負契約に関する義務

    建設業法第18条は「建設工事の請負契約の当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公正な契約を締結し、信義に従って誠実にこれを履行しなければならない」という原則を定めています。この原則のもと、建設業法にはさまざまな規定が置かれています。

    (1)すべての建設業者に共通する規定

    書面による契約の締結(建設業法第19条)

    建設工事の請負契約は書面(契約書)で交わすことが義務付けられています。工事内容、請負代金、工期、支払い条件、紛争解決方法など法定記載事項をすべて盛り込む必要があります。口頭での契約は認められません。

    不当に低い請負金額の禁止(建設業法第19条の3)

    取引上の地位を利用して、たとえば原価を下回るような請負代金で契約することは禁止されています。これは施主も含めた注文者すべてに対しての規定です。

    不当な使用資材等の購入強制の禁止(建設業法第19条の4)

    請負契約を締結した後に、取引上の地位を利用して資材や機械器具の購入先を指定し、強制的に購入させることは禁止されています。

    著しく短い工期の禁止(建設業法第19条の5)

    工事を施工するために通常必要と認められる期間よりも著しく短い工期を設定して契約を締結することは禁止されています。2024年4月から適用されている時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)の観点からも、適正な工期設定がこれまで以上に重要になっています。

    一括下請負の禁止(建設業法第22条)

    請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせること(丸投げ)は原則として禁止されています。ただし、多数の者が利用する施設の新築工事以外であれば、元請があらかじめ発注者の書面による承諾を得た場合は許容されます。公共工事では一切認められません。違反した場合は許可の取消し処分を受ける可能性があります。

    (2)元請・下請関係における規定

    下請代金の支払い(建設業法第24条の3)

    元請が注文者から出来高払いまたは完成払いを受けたときは、下請に対して1か月以内で、かつできる限り短い期間内に下請代金を支払わなければなりません。労務費については現金で支払うよう配慮する義務もあります。また、前払金を受けたときは下請に工事着手に必要な費用を支払うよう配慮しなければなりません。

    検査及び引渡し(建設業法第24条の4)

    元請は下請から工事完成の連絡を受けたときは20日以内に完了確認検査を行わなければなりません。下請から申し出があった場合は引渡しを受ける義務があります。

    不利益取扱いの禁止(建設業法第24条の5)

    下請が元請の違反行為を許可行政庁等に報告したことを理由に、不利益な扱いをすることは禁止されています。

    特定建設業者の下請代金の支払期日(建設業法第24条の6)

    特定建設業者は、工事完成の確認後、下請から引渡しの申出があったときは申出日から50日以内に下請代金を支払わなければなりません。特定建設業者が注文者から支払いを受けているかどうかは関係ありません。

    下請に対する特定建設業者の指導義務(建設業法第24条の7)

    発注者から直接工事を請け負った特定建設業者は、下請が工事の施工に関し法令違反がないよう指導に努める義務があります。


    4. 標識掲示・帳簿備え付け等の義務

    (1)建設業許可票(標識)の掲示

    建設業許可を取得した事業者は、許可票(いわゆる「金看板」)を掲示する義務があります。営業所と工事現場の見えやすいところに、許可業者であることがわかるように掲示しなければなりません。

    色・素材に決まりはありませんが(金属でもプラスチックでも紙でもOK)、サイズと記載事項は明確に規定されています。

    営業所の許可票(全許可業者が対象)

    • サイズ:縦35cm以上 × 横40cm以上
    • 記載事項:一般/特定の別、許可年月日・許可番号・許可業種、商号または名称、代表者の氏名

    (2)帳簿の備え付け・営業に関する図書の保存

    帳簿の備え付け

    営業所ごとに、営業に関する事項を記載した帳簿を備え付けなければなりません。記載すべき事項は建設業法施行規則(第26条第1項)に定められており、契約書や領収書等も帳簿に添付する必要があります。保存期間は5年間です。

    営業に関する図書の保存

    発注者から直接工事を請け負った場合は、営業に関する図書を10年間保存しなければなりません。営業に関する図書とは、完成図書、打合せ議事録、施工体系図のことを言います。


    5年ごとの許可の更新も忘れずに

    建設業許可の有効期間は許可日から5年間です。引き続き建設業を営む場合は、期間満了前に更新手続きを行わなければなりません。

    • 申請期間:許可満了日の3か月前から30日前まで
    • 手数料:特定・一般許可それぞれ5万円
    • 前提条件:過去の決算変更届や各種変更届がすべて提出済みであること

    更新を忘れると許可は失効します。 失効した場合は再交付ではなく新規申請が必要となり、許可番号も変わってしまいます。有効期限は必ずカレンダーに記録し、余裕をもって準備しましょう。


    義務を怠った場合の罰則

    建設業許可後の義務を怠った場合、以下のような罰則・制裁を受ける可能性があります。

    違反内容罰則・制裁
    決算変更届の未提出6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金
    変更届の未提出・虚偽記載6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金
    許可票の未掲示10万円以下の過料
    一括下請負の禁止違反許可の取消し
    技術者の未配置営業停止処分・許可取消し

    欠格要件にも引き続き注意

    建設業許可の取得後も、欠格要件に該当すると許可を失うことになります。

    • 法人の役員や個人事業主が禁錮以上の刑に処せられた場合
    • 建設業法、暴対法などに違反して罰金刑を受けた場合
    • 破産手続開始の決定を受け、復権を得ない場合
    • 暴力団員等が事業活動を支配している場合

    法人の役員だけでなく、株主(5%以上取得)や令3条使用人(支店長等) も欠格要件の対象です。役員変更の際は事前に確認を行いましょう。


    まとめ

    建設業の許可を取得すると義務が増えて窮屈に思えるかもしれません。義務と言われると面倒に感じるかもしれませんが、何か問題があったときには自らを守るものにもなります

    特に以下の4つを確実に管理しましょう。

    1. 届出義務 — 決算変更届を毎年提出し、各種変更届の期限を厳守する
    2. 施工体制 — 主任技術者・監理技術者を適切に配置する
    3. 請負契約 — 書面契約の締結、一括下請負の禁止などの規定を遵守する
    4. 標識・帳簿 — 許可票を掲示し、帳簿と図書を適切に保存する

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