建設業や解体業の事業者が、現場で発生した廃材やがれきを運搬する場合、産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
建設業許可と産業廃棄物収集運搬業許可は、別の法律に基づく許可です。廃棄物処理法では、産業廃棄物を収集・運搬する行為には原則として都道府県知事等の許可が必要とされています。
- 1. 産業廃棄物収集運搬業許可が必要となる場面
- 1.1. 1. 基本的な考え方
- 1.2. 2. 許可が必要な例
- 1.3. 3. 許可が不要な例外的ケース
- 2. 許可取得の要件と手続き
- 2.1. 取得要件の概要
- 2.1.1. 1. 講習会の受講
- 2.1.2. 2. 運搬施設(車両・運搬容器等)の確保
- 2.1.3. 3. 経理的基礎
- 2.1.4. 4. 欠格要件に該当しないこと
- 3. 積替え保管許可:単純運搬との違い
- 3.1. 積替え保管とは?
- 3.2. なぜ別途許可が必要なのか?
- 3.3. 積替え保管の要件
- 3.3.1. 施設要件
- 3.3.2. 場所の制限
- 3.4. 積替え保管が必要な典型例
- 4. よくある質問(FAQ)
- 4.1. Q1. 自社の工事現場の廃棄物を自社で運ぶ場合も許可は必要ですか?
- 4.2. Q2. 一般廃棄物と産業廃棄物の違いは?
- 4.3. Q3. 積替え保管の許可を取るのは難しいですか?
- 4.4. Q4. 複数の都道府県で業務を行う場合の許可は?
- 5. まとめ
産業廃棄物収集運搬業許可が必要となる場面
1. 基本的な考え方
廃棄物処理法では、廃棄物を排出した事業者(排出事業者)は、原則として自ら処理する責任を負います。
2. 許可が必要な例
◯解体工事後の廃棄物運搬
状況: 解体業者が解体工事で発生した木くず、コンクリートがら、金属くずなどを産廃処分業者へ持ち込む。
判断: 解体工事の発注者(建物所有者など)が排出事業者となるケースでは、解体業者は「他人の廃棄物を運搬する者」として産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
3. 許可が不要な例外的ケース
以下の場合は、産業廃棄物収集運搬業許可は不要です。
- 自社運搬の場合
自社の工場から排出された産業廃棄物を、自社の車両で自社の保管施設や処理場へ運ぶ場合。 - 廃棄物に該当しない場合
有価物であれば廃棄物処理法の対象外です。
有価物とは?
有価物とは、廃棄物でなく他人に買い取ってもらえるような価値のある物をいいます。判断の基準として、売却金額から運搬費用を差し引て、排出業者側に利益があるかが目安となります。 - 専ら物の場合
専ら物とは、古紙・古繊維・くず鉄・空き瓶類の4品目を指します。 - 広域認定制度、家電リサイクル法、自動車リサイクル法、鉱山法、家畜伝染予防法に関するものの場合
許可取得の要件と手続き
取得要件の概要
産業廃棄物収集運搬業許可を取得するには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
1. 講習会の受講
申請者(法人の場合は代表者または業務を行う役員)または業務を実質的に担当する従業員が、産業廃棄物収集運搬課程の講習を修了していること。
2. 運搬施設(車両・運搬容器等)の確保
収集運搬に使用する車両や容器を保有または使用権限を持っていること。
- 車両:自社所有またはリース
- 運搬容器:廃棄物の種類に応じた適切な容器(飛散防止シート、密閉容器など)
3. 経理的基礎
事業を継続的に行うための十分な財産的基礎があること。
- 債務超過でないこと
- 経常利益が赤字でないこと(赤字の場合は中長期の経営計画等で改善見込みを示す)
4. 欠格要件に該当しないこと
以下に該当する者は許可を受けられません:
- 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権していない者
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わった日から5年を経過しない者
- 廃棄物処理法等の違反により罰金刑に処せられ、その執行を終わった日から5年を経過しない者
- 暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
- 許可を取り消されてから5年を経過しない者
- その他、法人の役員等が欠格要件に該当する場合
積替え保管許可:単純運搬との違い
積替え保管とは?
積替え保管とは、収集運搬の途中で廃棄物を一時的に別の場所で保管しすることや別の車両に積み替える行為を指します。
なぜ別途許可が必要なのか?
一時保管場所は、周辺環境への影響や不適正処理のリスクがあるため、より厳格な管理が求められます。そのため、積替え保管を含む収集運搬業許可を取得する必要があります。
積替え保管の要件
積替え保管の許可を得るには、以下の要件を満たす必要があります:
施設要件
- 保管場所の周囲に囲いが設けられていること
- 廃棄物の保管場所であることを示す掲示板の設置
- 飛散、流出、地下浸透、悪臭発散を防止する措置
- 保管できる廃棄物の種類と数量の制限(通常は1日あたりの平均処理量×7日分が上限)
場所の制限
- 都市計画法などの法令に適合していること
- 保管場所周辺の生活環境に支障を来さない場所であること
積替え保管が必要な典型例
- 複数の現場から廃棄物を収集し、自社ヤードで一時保管後、まとめて処分場へ運搬
- 大型車両に積み替えて運搬効率を高める場合
- 廃棄物の選別作業を行う場合
よくある質問(FAQ)
Q1. 自社の工事現場の廃棄物を自社で運ぶ場合も許可は必要ですか?
A. 自社が排出事業者であり、自社の従業員が自社の車両で運搬する場合は許可不要です。ただし、下請業者が運搬する場合や、契約形態によっては許可が必要になることがあるため、契約内容を慎重に確認してください。
Q2. 一般廃棄物と産業廃棄物の違いは?
A. 産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、廃棄物処理法で定められた20種類の廃棄物です。一般廃棄物は、産業廃棄物以外のすべての廃棄物を指します。
Q3. 積替え保管の許可を取るのは難しいですか?
A. 通常の収集運搬許可に比べ、要件が厳しくなります。特に保管場所の構造設備基準や立地条件のクリアが必要です。
Q4. 複数の都道府県で業務を行う場合の許可は?
A. 各都道府県で個別に許可を取得する必要があります。
※通過するだけの場合、通過する自治体の許可は不要です。
まとめ
- 建設業許可だけでは不十分: 他人の産業廃棄物を運搬する場合は産廃許可が必須
- 排出事業者の判断が重要: 契約形態により誰が排出事業者となるかが変わる
- 積替え保管には別途許可: 一時保管を伴う場合はより厳格な要件をクリアする必要がある


