建設業法では、許可を受けた建設業を施工する場合、建設工事について一定の資格を有する技術者を現場に配置することが義務付けられています。これは、工事の適正な施工と品質確保、さらには公衆の安全を守るための重要な制度です。
本記事では、配置技術者について、解説します。
配置技術者とは?
建設業の許可業者は、元請、下請にかかわらず、施工する工事現場に必ず技術者を配置し、建設工事の管理・監督をしなければなりません。工事現場に配置される技術者のことを配置技術者といいます。
さらに配置技術者には、監理技術者との主任技術者の2種類があります。
監理技術者とは?
役割
建設業許可における監理技術者とは、一定規模以上の建設工事現場で技術面の総括的な管理・監督を担う技術者です。
監理技術者は、5,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)の工事現場において、施工計画の作成、工程管理、品質管理、下請負人の指導監督など、技術上の総合的な管理責任を負います。
資格・要件
指定建設業7業種では1級施工管理技士や1級建築士、技術士などの国家資格が必須です。その他の22業種では、一定年数以上の実務経験が認められれば資格取得が可能です。
配置・義務
監理技術者は専任で配置する義務があります。
※近年は人材不足対策として、特定の要件を満たせば、兼任が認められています。
主任技術者とは
役割
主任技術者とは、監理技術者を配置しなければならない工事以外の工事に配置される技術者です。
資格・要件
1.技術検定合格者
・2級施工管理技士(土木・建築・電気工事・管工事・電気通信工事・造園)
・2級建設機械施工技士(第1種~第6種)
2.建築士
・1・2級建築士
・木造建築士
3.その他国家資格保有者
技術士、電気工事士、電気主任技術者、電気通信主任技術者、給水装置工事主任技術者、消防設備士、地すべり防止工事士、基礎施工士、建築設備士、計装士、解体工事施工技士
4.各技能検定合格者
登録基幹技能者講習修了者:単一の建設業の種類における10年以上の実務経験が必要
(国土交通省:監理技術者又は主任技術者となり得る国家資格等より)
配置・義務
配置された主任技術者は、工事の規模や公共性によって、その工事現場に専任(常時継続的にその工事に従事すること)でなければなりません。
以下のいずれかに該当する工事に配置される主任技術者は、原則として専任でなければなりません。
- 公共性のある重要な工事:請負金額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は8,000万円以上)の工事。
「公共性のある工事」とは、公共工事だけでなく、マンションや商業施設など、戸建て住宅以外のほとんどの工事が含まれるとされています。 - 監理技術者を配置しなければならない工事(上記の金額に関わらず)。
上記の専任が必要な工事に該当しない、比較的軽微な工事では、主任技術者は専任でなくてもよく、複数の工事現場を兼任することが可能です。

専任義務がある工事であっても、例外的に複数の工事現場の兼任が認められる場合があります(専任特例)。これは、限られた技術者を有効活用し、生産性向上を図るための制度です。
以下のすべての条件を満たす場合、同一の建設業者が施工する2件までの工事現場を兼任できます。
- 密接な関連性: 複数の工事が「一体性または連続性がある」か、「相互に調整を要する」関係にあること。
- 近接した場所: 工事現場の相互の間隔がおおむね10km程度以内であること(発注者によって異なる場合あり)。
- 情報通信技術(ICT)の活用: 現場の状況を音声・映像で確認できる情報通信機器を設置し、それを用いた通信が可能な環境が確保されていること。
※令和2年10月には、下請負人が行う特定専門工事(鉄筋工事や型枠工事など)の一部で、元請負人の主任技術者が一定の要件を満たす場合に、下請負人の主任技術者の配置が不要になる特例も新設されています。
特例監理技術者とは?
特例監理技術者とは、2つの工事現場を兼務している監理技術者のことを指します。
通常、専任が必要な工事では監理技術者は1つの現場に専念しなければなりませんが、この特例制度を活用することで、一定の条件下で2つの現場を兼務することが可能になります。

監理技術者補佐とは?
監理技術者補佐は、特例監理技術者制度において重要な役割を果たす技術者です。特例監理技術者が不在の際に、その職務を補佐します。
資格要件
監理技術者補佐になれるのは、以下のいずれかの資格を有する者です:
① 1級施工管理技士補
- 1級施工管理技士試験の第1次検定に合格した者
- 対象:建築、土木、電気工事、管工事、造園、建設機械、電気通信工事の各施工管理
② 監理技術者資格を有する者
- 1級施工管理技士などの国家資格者
- 学歴と実務経験により監理技術者の資格を有する者
③ 主任技術者の資格を有する者
専任義務
監理技術者補佐は、配置された工事現場に専任で従事しなければなりません。他の現場との兼務は認められません。
営業所技術者と監理技術者等の兼任
営業所技術者は、営業所に常勤し、もっぱらその職務に従事しなければならないと規定されています。そのため、工事現場に出て監理技術者等と兼任になることは原則として認められません。
専任技術者の役割:
- 営業所での建設工事の請負契約締結における見積もり、入札
- 請負契約の締結時の技術的確認
- 建設工事の施工計画の作成や技術上の指導監督
営業所技術者が、監理技術者(または主任技術者)の職務を兼務できるのは、主に以下の要件をすべて満たす場合です。
- 契約関係の限定: その営業所技術者が常勤している営業所で請負契約が締結された建設工事であること。
- 兼務する現場数: 兼務できる工事現場は1つまでです(専任現場の場合)。
- 現場の要件(専任現場):
- ICTの活用: 現場の状況確認や意思疎通に必要な音声・映像の送受信が可能な環境が整備されていること。
- 近接・巡回: 現場が営業所から1日に巡回可能な範囲にあること(目安として、営業所と工事現場との距離が10km以内などとされていますが、自治体によって規定が異なる場合があります)。
- 連絡要員の配置: 現場に監理技術者の補助が可能な連絡要員を配置すること。
まとめ
建設工事の適正な施工と品質確保のため、建設業法では工事現場への技術者配置が義務付けられています。配置技術者には監理技術者と主任技術者の2種類があり、工事の規模や性質によって使い分けられます。
配置技術者制度は、単なる法令上の義務ではありません。これは建設工事の品質を守り、作業員や公衆の安全を確保するための制度です。適切な資格を持つ技術者を配置することは、工事の円滑な進行、トラブルの未然防止、そして最終的には発注者からの信頼獲得につながります。


