産業廃棄物の収集運搬業を営もうとする場合、都道府県知事の許可が必要です。この許可を取得するためには、複数の要件を満たす必要があります。
その中でも重要な項目の一つが「経理的基礎」です。今回は、この経理的基礎について詳しく解説します。
経理的基礎とは何か
経理的基礎とは、産廃収集運搬業を安定的かつ継続的に事業として営める財政状態にあることを証明する必要があります。簡単に言えば、「事業を始めて、きちんと運営していくだけの資金力があるか」という点を審査されるということです。
廃棄物処理法では、この経理的基礎を確認することで、不適切な廃棄物処理の回避、料金の不当な過度な請求の防止、および環境保全の推進を目指しています。
経理的基礎が要求される理由
許可申請時に経理的基礎を審査する主な理由は以下の通りです。
経理的基礎が不十分な事業者は、適切な処理費用を確保できず、不正な処理や不法投棄へのリスクが高まります。
また、事業の継続が困難になれば、廃棄物の放置といった社会問題につながる可能性もあります。
そのため、安定した事業運営を保証するために、一定以上の財政力が必要とされています。
経理的基礎の具体的な判断基準
各自治体によって細部は異なりますが、一般的な判断基準は以下の通りです。
1. 債務超過に陥っていないこと
直近3年間の決算書で、債務超過(負債が資産を上回る状態)に陥っていないことが必須条件です。これは企業の基本的な健全性を示す指標となります。
2. 税金の納付状況
法人税の納税状況は特に重視されます。基準は以下の通りです:
- 直近の納税額が1円以上であること
- 直近3年間に未納税額がないこと
この両方の条件を満たすことが「継続して事業を行うための一定の経理的基礎を有している」と判断される条件になります。
3. 自己資本比率
自己資本比率(企業全体の資産のうち、自己資本が占める割合)も重要です。最低でも10パーセント以上あることが望ましいとされています。
条件を満たせない場合の対応策
上記の基準を満たせない場合でも、希望を失う必要はありません。追加資料を提出することで、経理的基礎を有していることを示すことができます。
その代表例が、中小企業診断士による経営診断書です。この診断書により、事業の継続可能性や経営の安定性を客観的に証明できます。自社の状況が基準に満たないと思われる場合は、このような手段の活用も検討してみてください。

まとめ
産廃収集運搬業の許可を取得するにあたり、経理的基礎は不可欠な要件です。単に法令遵守や技術的な能力だけでなく、安定した経営基盤を持つことが求められています。
許可申請を検討されている事業者の方は、自社の財務状況を客観的に評価し、必要であれば専門家のアドバイスを受けながら、申請準備を進めることをお勧めします。各都道府県の廃棄物処理部局に事前相談することで、より具体的な基準を確認することもできます。


